読書って、体験?
西 村 嘉 人

 1学期の最終単元「読書の世界を深めよう〜森へ〜」の学習。単元の導入で、読書生活をふり返る時間を少し設けた。
「読書の記録って、書いたことある?」
「普段の読書で、2回、3回と読み返したことある?」
「読書の途中で分からない言葉の意味を調べた経験はある?」
と尋ねて、挙手させてみた。3項目とも見事にゼロ回答。

「じゃあ普段はどんな読み方をしてるの?」 
の問いかけに
「1回ざっと読むだけかな。」
「意味が分からなくてもそのまま進む。」
と子どもたちが答えるので、「森へ」の読み方を次のように提案した。
○読み返しはしない。
○分からない言葉は必ず調べながら読み進める。
○読みながら、どのような様子なのかを想像し、筆者と一緒にカヌーに乗ったり、森を歩いたりした気分で読み進める。

 すぐ提案に賛成し、読書が始まった。静かな教室で、辞典を引くときの紙の音とメモをする鉛筆の音ぐらいしか聞こえてこない。
「1時間かかって、まだ森まで行ってない!」
と、子どもたちの声。そして、
「こんなに1人でじっくり文章を読むは初めての経験でした。やってみるととても面白くて、次の時間も楽しみになりました。」
の学習感想を書く子どももあったぐらい集中して「森へ」を読み進めた。子どもたちのペースにまかせて後2時間をのんびり読書にあてる。

 読み終わった感想を交流させてみた。
「読んでいるすぐ近くに自然がいっぱいあって、滋賀県では経験できないようなすごい自然の世界に感動しながら読んでいました。」
「私は、命のすごさというか、生きていく強さみたいなことを感じました。熊の糞にこけが生えたり、倒木が次の命を支えたりすることに感動しました。」
「ぼくも、倒れた木の上に種が落ちて、その種が育って大きな木になって、倒れた木が新しい木が育つ栄養みたいに働いているのがすごくて、自然ってうまくつながっているなあと感じました。」
「突然出てきた鯨に驚いたり、川の向こうにいる熊に驚いたりしながら読みました。自分が海や森に行った気分で、面白い気分でした。」
 次々に話をする子どもたち。十分にツアーを楽しんだようである。
(彦根市立城南小)