▼子どもの1日。1時間目国語。発表に意欲を燃やしていた。2時間目は算数。計算に手間取ったがよく理解できたので満足そう。3、4時間目は理科。初めての実験だったので興味を持って学習。体育も好調。帰る前の数秒、友達と意見が合わず、少し気持ちがいらだった。それを解決しないまま、家に帰った。

▼帰宅し、「友達にいやな思いをした」と一言。心配した母親が詳しく知ろうと聞く。聞かれれば聞かれるほど不機嫌になる。母親にとっては、1日中不愉快な気分で過ごしたのだろうというように思える。「楽しいことや頑張った1日だったけれど、1ついやなことがあった」と言えばよかったのにと思うできごと。

▼同じことが上着の忘れ物でも起こった。運動場に忘れられた上着。気を利かして職員室へ持ち帰った。持ち主の子が、「運動場に上着をおいていたらなくなった」と上着探し。この子からいえば、上着を職員室へ届けたことは、人のものを勝手にとったことになる。「忘れていた上着を探してもありません。届いていませんか」という言い方になると親切になる。同じことでも言い方1つで親切にも泥棒にもなる。

▼「いやなことがあったけれど心配しなくてもいいよ」 「上着を忘れたので探しています」と一言を惜しまない、この言語力の育成が国語科の役割だろう。(吉永幸司)