楽しみに向かった音読発表会 (1)
森  邦 博

 5年生の学級で音読発表会が行われた。担任の先生から「よかったら来てください」と声をかけていただき、喜んで出かけたのだった。

 この数日前、この学級の子どもたちがグループ別に分かれて、廊下や特別教室を使って、音読の練習の工夫をしているのに出会ったことがあった。
 音読練習している子どもの教科書を見せてもらうと、強調して読む言葉や注意して読む表現には、傍線が引いてあった。これはグループのどの子の教科書も同じであった。このことからグループで話し合って大事に読みたい言葉を見つけていたことが分かった。自分たちの見つけた大事な言葉を音読で表す活動に取り組んでいるのである。  また、傍線の横には、「ゆっくり」「早く」「強く」などの言葉が書き加えられていた。「○○なように」と、読むときの注意点も書いてあった。

 子ども達は活動のめあててをしっかりととらえている。ただし、そのようには書いてはいるものの、音読での読み表し方で、そのことが伝わるような方法を知らないためか、音読の練習をしている様子を見ていても、音読が変わってゆかないもどかしさも感じている様子であった。そこで、「大事な言葉だから『大事ですよ』と伝えるためにそこの言葉だけをグループ全員で読んでみたらどうかな」とアドバイスした。
 子どもたちは、その部分に来ると音読の声を重ねる読み方を早速試してみた。すると、今まで一人で読んでいた時とははっきりと音読が変わったという実感を持てた様子であった。一人の音読に他のグループのメンバ−の音読が参加し、全員で作っている感覚も生まれている様子が感じられた。

 また、何度も読むうちに覚えてしまい、意識しないうちに音読のスピードが早くなってしまっている子も見受けたので、「すごいね、覚えたんだね、でも覚えるとどうしても早くなってしまうね、せっかく覚えたのに、聞いている人にとっては、却って分かりにくくなってるよ。今度は気持ちを入れたい言葉は特別ゆっくり読むとかの工夫を試してみたらどうかな」とアドバイスした。
 その子はずいぶん滑舌よく読める子でもあったので、このアドバイスを自分なりに考えて、傍線の言葉をゆっくり強調するように読んだのだった。聞いている子からも「いい!」という評価の言葉をもらって一層活動に意欲をもった様子であったことを思い出す。

 そんな経過のあった学級なので楽しみに教室に向かったのだった。
(大津市立田上小)