伝わった?分かりやすかった?
西 村 嘉 人

 6年生の第1教材は「カレーライス」。今年も、この教材を初めて子どもに指導する同僚が、
「『カレーライス』って、この時期の子どもにぴったりで、本当にいい教材ですね。」
と話しかけてきた。ただ、それだけでうれしくなってくる。そんな大好きな教材の授業の一コマ。

「今日は、自分で決めた読みの視点で一人勉強してきたことを、発表し合っていきます。今日の学習の後でさらに詳しく考えてみたい課題が見つかるように考えながら聞き、自分のノートに友達の考えもメモしていきましょう。」 と子どもに指示を出した後、
「今日の黒板は、Iさんに作ってもらいます。いつも学習ノートに先生と変わらない聞き取りメモを書いていますので、先生の代わりです。」
と板書係を突然指名した。指名したIさんは、始めは驚いて拒否したが、「いつものノートと同じでいいよ。」の言葉で板書係を引き、前に出てきた。それだけではない。「ちょっと準備していいですか」と前置きして、黒板のまん中に「ひろし」「お父さん」と間隔を空けて、中心となる人物の名前を大きめに書いた。

 さて、発表のスタートである。
 指名は子どもたちの相互指名であるので、私の仕事は、子どもたちの発表を聞いて、学習の途中で口をはさむチャンスを探して話すだけである。この日は
「さっきから、ひろしが約束を破ったことは悪いけど…って繰り返し出ているけど、それはひろしも認めてるでしょ。なのに、どうしてそこからお父さんとの関係がもとに元に戻らないのか考えた人はないかな。」
のように、子どもの発言にきっちりポイントで話を返せている。(授業記録より)

 発表する子どもたちは、と言うと、板書しているのが教師でないので、自分の伝えたいことをゆっくりと話したり、板書の文字を見ながら確認して話を進めている。面白いものである。ちょっとした変化で、「伝える」が意識できているのである。

 この日のIさんの学習感想。
「今日、私は黒板にまとめました。ちょっと難しかったけど、みんな分かりやすく発表してくれたのですよかったです。みんなとてもいい発表だったのですごいなあと思いました。… (以下略)」
しっかりみんなの気遣いも書きながら感じていたのである。また、
「次は黒板係を私にさせてほしい」と多くの希望者がその後に名乗り出たのは、何よりの驚きである。
 いい教材は、いい学習を創る?
(彦根市立城南小)