本棚  全国学力テスト その功罪を問う
志水宏吉 著 BK1
岩波ブックレット 2009.1 480円
全国学力テスト

 次年度も実施されることが決まっている「全国学力・学習状況調査」について、かつて行われた全国学力調査やイギリスの「ナショナル・テスト」と比較しながら、その功罪について論じている。

 かつての調査は1956年度から実施された。小・中・高校まで含めた抽出調査であり、国・数だけでなく多様な教科が対象となっている。悉皆で行われたのは1961〜64年度の4年間、中学校のみである。その後はまた抽出調査となったが、希望すれば受験できたため、小・中では90%以上の学校が参加した。
 この調査で明らかになったのは、地域間格差(都鄙格差)の問題であった。1959年度と2008年度の順位を比べると、下位であった東北地方の各県が上位になり、都市化の進んでいた府県が下がっている。ただ上位と下位との格差は大きく縮まっている。

 著者は実態把握は必要であるが、70億円もかけてする悉皆調査は10年に一度やればいい。教育評価については市町村レベルで行うべきである。説明責任を果たすために公表は必要だが、その内容を検討する必要がある。競争主義の視点からは有害であるという。最も重要なことは、この2年分のデータを徹底的に分析することであると述べている。(常諾真教)