お話を書こう
弓 削 裕 之

 絵本作家・宮西達也氏の講演会を機に、子どもたちの物語に対する関心が高まった。私のクラスでは感想文は書かず、その関心を創作意欲につなげようと試みた。子どもたちは『わすれられないおくりもの』(教出3上)のまとめで主題作文を書いているので、テーマのあるお話づくりに取り組むことにした。

1.テーマ(主題)を考える。
2.題名を考える。(後でもよい)
3.登場人物を考える。
4.お話を書く。
5.お話の挿絵を描く。

 主題は、自分が経験したことをもとに考えるよう指示した。どうしても体験作文になってしまう子には、「ぼくは」を「太郎は」に変えたり、具体的な日付を「ある日」に変えるなど、物語に出てくる表現の特徴を意識して言葉を選ばせた。担任もお話を書き、物語の型を示した。中には、目次を書いたり、章分けをしたり、原稿用紙を本のように綴じるなどの工夫をする児童もいて、休み時間には友達と互いのお話を読み合う姿も見られた。
「これは、私がバレリーナの時に、はいていたトウシューズ。あゆ子は、今日、これをはいて、コンクールに出なさい。きっとうまくできるわ。」
とおっしゃいました。これはまほうのトウシューズなんだとあゆ子は思いました。
『まほうのトウシューズ』(主題・信じればなんでもできる)

 完成したお話を、本人直筆の挿絵とともに学級通信に掲載すると、子どもたちから予想以上の反応が返ってきた。「今日は誰のお話かな」とワクワクする声や、「めっちゃおもしろかったわ!」「ほんまの本みたい」と友達のお話をほめる声も聞こえた。普段は作文を嫌う子も、自分のお話がみんなに読んでもらえることに喜びを感じたようで、すぐに続編を書き始めていた。

 保護者向けのコメント欄も設けると、翌日に返事が届いた。「○○さんらしいお話ですね」「経験したことを上手にお話にしたね」などうれしいコメントをもらった作者は、少し恥ずかしそうに笑って、コメントが書かれた紙を大事そうにファイルにしまっていた。
(京都女子大学附属小)