冒頭文を読む「木かげにごろり」
吉 永 幸 司

1、「世界の民話」を読む
 「木かげでごろり」(金森襄作)はよくばりな地主を、お百姓がこらしめるという筋書きである。書き出しは、次のようになっている。
山をこえ、七つの山をこえた山里にそれはのどかな村がありました。
 おひゃくしょうたちははたらき者でみんな助け合いながらなかよくくらしていました。
 でも、一つだけこまったことがありました。おひゃくしょうたちに土地をかしている地主が、とてもよくばりでお米や麦などをどっさり横取りすることです。

 「山をこえ、七つの山をこえた山里に」から始まる話は、日本でいえば「むかしむかしあるところ」ということだろうか。出てくる人は「おひゃくしょう」と「地主」という設定も日本とよく似ている。日本のお話と似ているところ、少し違うところなど、日本の昔話や民話と比べて読んでいくとおもしろい学習なりそうである。

2、人物の設定を読み取る
 登場人物は働き者の百姓と欲張りの地主である。百姓は助け合いながら仲良く暮らしている。「でも、一つだけこまったことがありました」が民話の始まりである。だから、困ったことを探すことが読むことの秘訣になる。
「こりゃあ、だれのゆるしをえて、わしの木かげに入ろうとする。」
「木かげを買い取ってから入れ。」
「こりゃあ、だれのゆるしをえて、わしの門の前でねておる。」
「こりゃあ、だれのゆるしをえて、わしの中庭でねておる。」
「こりゃあ、だれのゆるしをえて、わしの板の間でねておる。」
と、欲張りの台詞が繰り返し出てくる。つまり、百姓が地主を追い詰めていくのである。
 とうとう地主が、頭をかかえ、
「ひええ、とんでもないものを売ってしまった。」
と地べたにへたりこみ、「一つだけ困ったこと」が解決をする。
 民話の面白さは、読んでその仕組みが理解できることである。人物の気持ちとか様子等を細々と指導をすると面白さが複雑になるので、登場人物のどちらかに焦点を当てて読ませるようにする。

3、場面の様子を読み取る
 民話の特色は、登場人物だけでなく、風習が大きな位置を占める。それは場面の様子に表れる。「ご先祖さまのくよう」という表現や挿絵を丁寧に読むことも大事である。
(京都女子大学)