マサエを読む「わらぐつの中の神様」
西 村 嘉 人

 「物語の始めの部分を読んで分かることを出し合おう。」
と、子どもたちに問いかけてみた。「わらぐつの中の神様」の学習を始めて3時間目のことである。
C 雪がしんしんと…のところで雪が降っていることが分かります。
C よく似ているんだけど、マサエがスキー靴を乾かしたりしているから、雪の多い地方の話だと思います。
C 夕ご飯を食べた後のことだと分かります。
C お父さんもおじいさんも家に今はいなくて、家にはおばあちゃんとお母さんとマサエの3人だということが分かります。
 こんな物語の冒頭の読み取りから始めた「わらぐつの中の神様」の学習。物語の主人公は誰かを考えさせる意図で物語の冒頭を丁寧に読ませてみた。こどもたちには、
「物語の冒頭をよく読むと、この話がどんな時代の話で誰が出てくるのかがちゃんと書かれている」
ことを教えるためである。

 もちろんこの話の主人公は「マサエ」である。そこで、物語全体を「マサエの心情」を追いながら読み進める課題を出した。
 おもしろかったのは、中の場面「おみつさんと大工さん」が出てくる場面である。子どもたちには、
「おばあちゃんが話している『おみつさんと大工さん』の話を、マサエはどんな思いで聞いていたか想像してみよう。」
と、この場面でも「マサエ」を外さずに読ませてみた。
C おみつさんは、自分で働いて雪げたを買おうとするなんてえらいなあと思っていたと思います。
C おみつさんが作ったわらぐつは格好が悪いけど、気持ちが込められているいいわらぐつだと思ったと思います。
C 大工さんはおみつさんの考えていることがわらぐつを見ただけで分かるのだからすごいなあと思ったと思います。
のように、子どもたちは「おみつさん」の心情を自分の心情と重ねて発言を続けた。

 いつも「わらぐつの中の神様」の学習で、「中」をどう読ませようかとあれこれ考えてきた。一つの物語なのに「中」だけが学習している子どもたちに特別な物語のように映っているのではないかと気にしていた。
 今回、初めて子どもたちに「おばあちゃんの昔話を聞いているマサエ」の存在を意識させて読ませてみたのだが、子どもたちは思いの外素直にマサエの心情を想像して物語を楽しんだように感じた。「おかえんなさあい。」 のマサエの言葉に、子どもたちはおじいちゃんとの会話を期待したようである。
(彦根市立城南小)