本棚  パソコンは日本語をどう変えたか 日本語処理の技術史
YOMIURI PC編集部 著 BK1
講談社BLUE BACKS 2008.8 900円
パソコンは日本語をどう変えたか

 手書きするのはメモぐらいで、「日本語を書く」のに、パソコンを使うのが当たり前になっている。パソコンで日本語、特に漢字をどう処理しているかなど知らなくてもパソコンを使うのに不自由はないが、知っているとおもしろい。
 「日本語処理の技術史」という副題がつけられているが、歴史と言ってもこの30年余のことである。しかし、その進歩は著しい。
 最初に新聞がコンピュータで編集されたのは1972年。日経とIBMの共同開発である。ハード、ソフト合わせて40億円のシステムだったという。それから10年余りで家庭用のパソコンで漢字が使えるようになった。

 興味深いのは、使用できる漢字が工業規格で規定されてきたことである。JIS第1水準、第2水準(6355字)が定められたのが78年。83年には字体が変更され、「おうがい」が「鴎外」としか書けなくなった。04年の改正で再び変更され、Vistaには04年版(第3・第4水準まで含め1万字以上)が搭載されている。WINDOWSのバージョンによって表示される字体が異なるという事態が起こっている。漢字表記をパソコンに頼っていると、正しい字体がわからなくなってしまうということである。(常諾真教)