本棚  環境問題のウソ
池田清彦 著 BK1
ちくまプリマー新書 2006.2 760円
環境問題のウソ

 「目からうろこ」という言葉があるが、まさにそんな思いのする書である。
 第1章では、地球温暖化の問題が、さまざまな資料を使って検証される。それがグローバルなものか、ローカルなものなのかは、どこの温度をデータとするかで違ってくる。また、地球の歴史を見れば、今より暖かかったことも寒かったこともあり、それは自然現象である。太陽の活動が地球の温度変化の主因であるという考えも発表されている。現在、温暖化しているとしても、CO2の人為的排出が原因だという科学的根拠は曖昧である。京都議定書を実現するために大金をかけるメリットはないと著者は言う。

 第2章ではダイオキシンの問題が取り上げられる。ダイオキシンの健康被害で問題となるのは、土壌中や大気中の濃度ではなく、摂取量であり、それはほとんど食品からくるものである。農薬を規制してからの摂取量は、ゴミ消却による大気中の濃度が高くなっても、逆に減っているという。つまり、家庭でのゴミ焼却を禁止したり、大金をかけて高性能なゴミ焼却炉を建設したりする必要はないという。

 第3章では、外来種問題、第4章では自然保護の問題が取り上げられる。ぜひ一読を。(常諾真教)