「書くこと」で
森 邦 博
1学期も終わりの頃、教務のK先生の机の上に、たくさんの書類の山ができていたので、ちょっと気になり手にとってみた。それは、K先生が授業を担当している高学年の各クラス子ども達の今日までの学習の記録を綴じたファイルが積んであったのだった。K先生は理科の授業を担当しているので、そのクラス分のファイルを集めると机の上に山ができるというわけである。 そこで聞いてみた。 「学習の足跡を残させようと思ったんです。1時間1時間の学習の記録を残していくことで、一人一人に学習したことが増えていく実感を持たせることができるのではないかと思ってやっています。」 何クラスも授業を担当しているので、200人ほどの子どもの記録を見てやらなければならないので正直大変だということであったが、感想やアドバイス、はげましの言葉などを書き込んで返してやると、子どもが大変喜ぶことが励みになって続くのだとのことである。 「いいことですね、子どもにファイルを読み直す時間を作ると、自分の学習の歩みを振り返ることになるし、学習内容の復習というだけでなく、先生の朱書きの言葉がきっかけになって、学習のまとめ方や記録の仕方の勉強をさせることもできるしね。多目的に使えるね。」 と話し合ったのだった。そして、 「自分のファイルだけでなく、友達の学習の仕方を学ぶのも高学年らしい学習になるね。良いものは掲示したり、紹介したりしてやるといいかもしれないね。いいのがあったら紹介してほしいな。」 と付け加えた。 すると数日後、K先生から、 「1学期に学習を振り返っての感想を書かせました。こんなのがありました。」 と数人の作文のコピーを渡してくれた。 読んでみると自分の学習の記録を読み直して、頑張ったこと、学んだこと、工夫したことなどを整理してまとめている。1学期を振り返っての感想を先生に伝えようと書いた学習記録の1頁は、「事実や資料を活用した分かりやすい作文を書く学習」=「国語学習」が成り立っている頁にもなっていると思ったのだった。 ファイル作りを通じてK先生は書くことの大事な力を育てている。学習の記録作りの教育的な価値を改めて教えられた。 (大津市立田上小)
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