子どもの詩集づくり
三 上 昌 男

 安土町に生まれ、近江を代表する詩人である井上多喜三郎(1902〜1966)の詩に次のような作品があり、老蘇小学校の玄関前に詩碑が建てられている。
  私は話したい
目白やきつつきと
熊やリスと
きき耳ずきんなんかかむらないでも
君たちの言葉が解(わか)りたい
私のおもいをかよわせたい
もろこやなまずに
亀の子や蝶々に
降りそそぐ日光の中で
やさしい風にふかれながら
つばなやたんぽぽと
ゆすらうめやあんずと

 郷土に土着した暖かな生命へのまなざしは、井上多喜三郎の詩の特質であると評価されている。安土に住む子どもたちに伝えていきたい詩であり、詩心であると考えている。

 安土町教育長の木野和也さんが、町内の児童生徒の詩集づくりを推進されて3年が経過した。私は、平成19年度の『ききみみずきん」第3号の編集を任されたのであるが、町内各校に作品の提出を依頼しただけで、十分な働きかけができないままで終わってしまった。安土小3年・5年、老蘇小4年・6年、安土中2年の児童生徒の詩集は、子どもの文化を育てる上で価値あるものである。今回の児童生徒の詩を読んでいくと、それぞれの学級の先生方が、詩作りを工夫して指導いただいていることが伺える。

 第4号の発行もすでに決まっており、今回も編集を担当することになった。今後は、この詩集の活用も考えていきたい。
 安土小学校では、校内研究で、地域を見つめ、実践する環境学習に取り組んでいる。安土の自然や文化に触れながら育つ子どもたちに、井上多喜三郎の存在や前掲の詩の意味を伝える資料提供、詩の創作を支援することを考えてみたいと思う。
 言語力の向上が、新しい学習指導要領の基本に置かれている。「書くこと」の指導内容に言語活動例が具体的に明示され、詩の創作について記述されている。
 本校においても、読む力や書く力の向上が課題であり、言葉を大事に遣う国語教室づくりを進める必要がある。その中で、詩を読んだり書いたりする活動も継続しながら、身近に詩のある言語環境作りに努め、地道に詩心を育てる実践を求めていきたいものである。学級担任の先生たちと連携し、できることから取り組みを始めていきたい。
(安土町立安土小)