本棚  〈聞く力〉を鍛える
伊藤 進 著 BK1
講談社現代新書 2008.3 700円
〈聞く力〉を鍛える

 「話術」という言葉あるが「聞術」という言葉はない。上手に話すためには努力や訓練、工夫が必要だが、聞くためには特別なことは必要がないと考えられてきたことを暗に示している。聞くことが研究対象となったのはここ半世紀ほどのことで、1979年に「国際聞く学会」が設立されたという。

 聞く力が低下している現代にあっては、聞く力を意図的に鍛えることが大切である。よく聞くことによって「売り上げが伸びる」「生産性が上がる」「人生が豊かになる」などの報酬が列挙される。

 聞く力を構成するものは、
@モチベーション…動機づけ(話の内容や話者への関心、好奇心、責任感など)
Aリソース…資源(注意力、知識、理解力、記憶力、忍耐力、時間的心理的余裕など)
Bスキル…円滑に実行する力(セラピー的聞き方、批判的聞き方、鑑賞的聞き方など)

 国語教育に関する書物ではないが、「聞くこと」の指導に参考になるところもある。
 教師は話すことのプロのように考えられているが、聞くことについてはどうであろうか。子どもとの人間関係を作る上で、子どもの話がきちんと聞けているかどうか再度自己点検をしてみる必要があるように思う。(常諾真教)