語りかけてくるものの共有
廣 瀬 久 忠

 6年担任の依頼で「ヒロシマのうた」を5時間で指導した。
 学習の見通しを伝える。
 まず、毎時間全文一斉通読する。(通常35分以上かかるのでとにかく速読に徹する)
 次に、読後に自分に「語りかけてくるもの」を書き残すこと。最後にみんなの「語りかけてくるもの」を黒板に集大成すること。

 学習の様子を記す。
@学習の見通しを持つ。着語を添えての範読(速読18分)「語りかけてくるもの」Tを書く。
A「語りかけてくるもの」T一覧表の紹介。一斉速読(17分)「語りかけてくるもの」Uを叙述の行間に書き込む。
B「語りかけてくるもの」Uの紹介。一斉速読(16分)「語りかけてくるもの」Vを叙述の行間に書き込む。
C「語りかけてくるもの」Vの紹介。一斉速読(15分)これまで書き綴ってきた「語りかけてくるもの」TUVを再構成して「語りかけてくるもの」Wを書く。
D「語りかけてくるもの」Wを発表して、みんなで聞き合う。

●速読は、どんどん速くなる。毎回1分以上短縮されていく。真剣なまなざしで声が出せる。声の総体に力がある。合唱を鍛えた学校である。呼吸法が身に付いており一息が大変長いのに感心した。速読後、「時間は…」「やったぁ。また縮まった」の声にこの活動の求心力の手応えを実感する。
●自分に「語りかけてくるもの」は主題追究を子どもにわかりやすくイメージさせる言葉である。抵抗感を感ぜず、読者の立場「自分はこう読んだ」の積み重ねの中で主題に近づけさせたかった。
●みんなの「語りかけてくるもの」を交流し、板書した。書き出しは右下から。最初は、戦争、原爆のおそろしさに始まる。自分の「語りかけてくるもの」の聞き合いは、黒板の左上にその終着点を見た。「悲惨な悲しい状況にあって、未来を信じ、幸せを願って健気に強く生きようとする少女になぞらえた人々の心の強さ」を子どもたちの言葉をもとに板書した。板書を俯瞰して「ヒロシマのうた」がみんなに語りかけようとした『主題』が見えた。

 チャイムが鳴り、T君が私のそばに来て言った。「教頭先生、すごく今すっきりした気分です。ありがとうございました。みんな同じじゃなくて、それぞれがいろんな事を考えてると分かりました」
 「語りかけてくるもの」の共有はそれぞれの考えていたイメージのズレを修正し、読み方の深さを実感し、全体で作りきった1枚の板書が教室で学ぶことの真の意味を語っていることを実感する1時間であった。
(湖南市立菩提寺北小)