先生のどうでもいい話
蜂 屋 正 雄

 昨年、研究会の講師としてお招きした笠原登先生の実践を自分なりにアレンジして行った。笠原先生は「良い聞き手が育つためには、良い話者としての教師が、良い話者としての教師には、良い教材が用意されていなければならない」と言われ、教師こそが言語環境であると、日々、子どもたちとの対話を続けてこられた。

 自分の得意分野である「科学」の話を中心に、週に1、2回『先生のどうでもいい話』と題して、「天気予報の仕方」「星の色について」「葉っぱはなぜ緑色なのか」「メダカの時間、人間の時間」など、科学的な雑談を子どもたちに話し、「感想」を手紙形式で書かせている。その時のキーワードは「連想」。以前に聞いた話やふだん見ているものの見方が変わったり、新たな疑問がわいたりしたことについて書く。

 <昔は月がカレンダーだった>
 昔、江戸時代にはおうちにカレンダーはありませんでした。では、みんなはどうやって生活していたのでしょうか。…実はお月様がカレンダーだったんです。
 「三日月」って聞いたことないですか? 三日月というのは、新月から3日目の月という意味です。
 「うーさぎ うさぎ なに見てはねる 十五夜お月さん 見てはーねーる」という歌を知っていますか? 昔から月にはウサギが住んでいるといわれていました。そこからこういう歌が作られたと思うのですが、ここに出てくる「十五夜」という月は、新月から15日目の月のことです。15日目にはちょうど「満月」になるのです。つまり、お月様の形を見れば、今日は何日か分かったのです。この、お月様をカレンダーにする暦のことを「旧暦」といいます。
 旧暦では、お正月は1月1日ですから新月になります。また、七夕は必ず半月になります。織り姫星と彦星を渡す船のように半月が空に浮かんでいるのです。お盆の8月15日は、必ず満月になります。昔の人はその満月を見て、「地獄の釜が開く日」といって、死んだ人の魂が家に帰ってくると考え、おうちでおもてなしの用意をして待ちました。
 昔はお月様と人間の生活がとても仲良くつながっていました。旧暦で日本の行事を見ると分かることもたくさんありますよ。
「お月様がカレンダーだなんて、びっくりした」「毎月少しずつ遅れていくのは、どうして計算していたのか、昔の人に聞いてみたい」「閏○月っていう言い方が面白い」などの手紙に言葉を添えて返す。面白いお手紙は、学級通信で紹介する。
(草津市立笠縫東小)