本棚  ケータイ世界の子どもたち
藤川大祐 著 BK1
講談社現代新書 2008.5 720円
ケータイ世界の子どもたち

 大人にとっては(年齢が高いほど)携帯電話は、電話としてのイメージが強い。他によく使うのはメール、カメラ機能だろうか。一方、子どもにとっては、まずメールであり、カメラ、インターネット端末としての機能である。携帯「電話」ではなく「ケータイ」なのである。
 親は緊急の際に連絡ができるからと買い与えるが、子どもが使うのはケータイである。最初から意識にズレが生じている。

 本書では、最近は社会問題ともなっているプロフや学校裏サイト、出会い系サイト、ネットいじめなどの実態が説明される。また、フィルタリング原則加入の方針が出されたが、フィルタリング自体にもまだまだ問題があることも指摘されている。  仲間内での頻繁なメールのやりとりによって同調圧力が強くなり、互いの違いを肯定するような関係が築けず、自分のアイデンティティが確立できなくなる。「違う、だからよい」という発想ができるような教育を進めること、親や教師以外の大人と接することの大切さを説いている。

 子どもに「ケータイがほしい」と言われたら、それをきっかけに話し合い、ルールを作り、購入後も利用に関して話し合うことが大切であると述べている。(常諾真教)