言葉は違うけど「食べる物」
岡 嶋 大 輔

 「いろいろなくちばし」(光村1年上)は、3種類の鳥のくちばしについて同じ文型で繰り返し説明された文章である。
 一つひとつの言葉の意味やそれと挿絵とのつながり等を理解し、本文の大体がつかめた後の時間。3つの段落をそれぞれ1枚ずつに印刷したワークシートを配り、
「文章を読んで気づいたことはありませんか。」
と問うた。
 始めの内は、
「きつつきも、おうむも、くちばしの根元は、上と下が同じぐらいの太さです。」
等と、挿絵を見ての細かい部分に着目した発言が続いた。それはそれで、1年生ながらにしてよく見ているなと思うものが多く、みんなも「ほんまやなあ」と感心の連続であった。

 挿絵から気付いたことが多く出され、もう満腹気味かなという頃、
「文章にも面白い秘密が隠されているよ。ワークシートを3枚並べてみてごらん。」
と、文章に目を向けるよう声を掛けた。
 以下は、その後の授業場面。

C 「これは、」が、3枚とも出てきます。
T 「これは、」がどこにあるのか、みんなで指で押さえてみよう。
C 「これは、なんのくちばしでしょう。」までいっしょです。
T 同じところ、似ているところがたくさんあるんだね。
(中略)
C 言葉は違うんだけど、どれも、最後にその鳥が『食べる物』が書かれています。
T みんなで確かめてみようか。
C きつつきは、木の中の虫。おうむは、種の中の実。はちどりは、花の蜜。
T 言葉は違うけれど、その鳥が『食べる物』ということでは、同じですね。
(中略)
C どれも、始めに『くちばしの形』が書かれています。

 こう追ってみると、1時間の中で、子どもの発言内容が高まっていることが分かる。単に「言葉が同じところ」を指摘する思考から、虫、実、蜜と並べて「鳥の食べ物」とする上位語へと変換するような思考へと変化していった。一人の子がその発言をすることにより、皆が触発されてその他の叙述においても上位語への変換ができないかといった思考の流れができていった。
 教師が始めから「言葉が同じところを発表しましょう」と発問していては作れなかった学習の流れであろうと思っている。
(滋賀大学教育学部附属小)