本棚  子どもが本好きになる瞬間
五十嵐絹子 著 BK1
国土社 2008.2 1700円
子どもが本好きになる瞬間

 著者は山形県鶴岡市立朝暘第一小学校の学校司書を務めていた人である。この学校は図書館活用教育の実践校として知られており、その取り組みは何冊もの本にまとめられている。

 この学校に赴任してくる教員の全員が最初から図書館活用教育をしようと思っているわけではない。嫌いな子どもにまで読ませなくてもいいではないかと考える教員もいる。しかし、本を読むこと、本で調べる学習をすることで子どもが変わっていくことを実感すると教員も変わっていく。本書には、子どもたちが本好きになっていく姿が具体的に語られている。

 一番印象に残ったのは、次のような考え方である。
 算数の足し算引き算が嫌いだから学ばなくてよいという理屈はないように、読書が嫌いだからといって「本が読めない」ままにして「読まない自由もある」とは考えない。算数の習熟と同じように、読む訓練が必要であり、読書トレーニングをして読書力を高めることが大切である。

 そのために1年生から段階的な指導が工夫されているのはもちろん、個別指導がしっかり行われている。読書力が学力を保障するという考えのもとでは当然の取り組みである。俄に真似はできないが、近づきたいものである。(常諾真教)