本棚  すべらない敬語
梶原しげる 著 BK1
新潮新書 2008.1 680円
すべらない敬語

 小学校の国語科では5年生で敬語の学習をするが、多くの時間を費やすこともなく、尊敬語や謙譲語などの知識を得る程度である。

 しかし、世間には「敬語業界」というようなビジネスがあることを、本書で初めて知った。「敬語がしゃべれないと一人前の社会人とはいえない」という思いから、敬語本や敬語教室などの需要が多いのである。

 平成19年2月に新しい「敬語の指針」が出された。そこでは、尊敬語・謙譲語T・謙譲語U・丁寧語・美化語と敬語が5つに分類され、複雑になったような印象を受けるが、これまで誤用とされてきた表現を認め、かなり許容範囲の広いものになっている。

 著者は、アナウンサーとしての自分の話し方や著名人の話し方からさまざまな事例を引きながら、指針に基づいた敬語の使い方を論じている。「正しい敬語さえしゃべれればそれでいい」のではなく、「敬語とはコミュニケーション力向上のための武器である」というのが著者の考えである。つまり、タメ語も含めて、どういう人間関係を作るためには、どういうことばを使うかを考えることが大切だという。

 先日、JR駅のホームで電光掲示板に「電車がまいります」と表示されているのを見た。どう思われますか?(常諾真教)