【特別寄稿】
よい授業をする上で、留意すること
平 阪 美 穂

 第一に授業の計画を立てる際に、行おうとする授業が学習する内容全体の中でどのよう な位置づけなのか考えることである。たとえば、社会科の授業で自分の住んでいる地域に ついて学習するときでも、単に地域に何があるのか、その特性は何であるのかを考えるだ けではなく、今後、他の地域、日本全体のことを学習することを念頭において授業を組み 立てるのである。実際の授業で子どもに今後のことまでも意識された授業であると感じさ せることは必ずしも必要ではない。しかし、系統立てた授業が展開されていたならば、今 回の学習の内容にも深みが生まれるであろうし、今後発展した内容を学習するときにも理 解がしやすくなると考えられる。

 第二に子どもの状態を把握することである。その学習内容が子どもにとって理解しやす いのか、取り組みやすいのか、授業はどのように展開させれば理解を促しやすいのかなど、 常に学習者を意識しておかねばならない。例えば、全体的に授業中に発言することが苦手 であるということがわかっていたならば、いったんノートに考えをまとめてからそれを発 表させる形にするような配慮が考えられる。

 第三に、授業の雰囲気作りである。これには、日々の学級作りが影響することはいうま でもなく、学級の雰囲気がよくない中でよい授業はなかなかうまれない。しかし、どのよ うな学級の状態であっても、授業をするときに教師自身が楽しそうにいきいきと授業をす ることが重要である。もちろん、場合によってはからまわりの可能性もなきにしもあらず であるが、教師自身が楽しんでいない授業で子どもが勉強する気持ちにはなれないであろ う。例えば国語の授業で物語文を扱うとしても、教師がそれに興味がないことが子どもに 伝わってしまえば、子どももそれに興味を持って取り組むことは難しいであろう。

 第四に、定着の確認をすることである。一授業が終わるたびにその授業のまとめをする 必要がある。授業のはじめにその授業のねらいが説明され、そのねらいにそって授業が展 開されていたとしても、子どもがそのねらいを意識できていたとはかぎらない。活動だけ が印象に残っているだけかもしれない。例えば、国語の授業で、物語の主人公の心境の変 化を理解することをねらいとし、授業が展開されていたとしても、子どもがその授業を「物語を読んだ」としか理解していなければその授業は失敗といえるからである。また、その授業を終えてからも、ここで学習した内容を活用できるような場を設定していくことも求められるであろう。

 以上四点を挙げたが、どれも言い換えるならばその一授業だけのことを考えるだけでな く、学び全体を常に意識しておくことが求められよう。
(京都女子大学大学院)