▼1年生を担任していた時、体育の時間のこと。頑張って走っていた子が転ぶというできごとが起こった。何でも事件にしたがる1年生は、その様子を見て一斉に笑った。その笑いに「笑うようなできごとではありません」叱った。

▼その叱り方が厳しかったという理由で1人の子が、登校を渋るようになった。「先生がこわいと言っています」というのが保護者の言い分であった。そのできごとをどのようにして解決をしたか、記憶に残っていない。けれども保護者に次のように言ったことはしっかり覚えている。「うちの学級では、頑張っている子を笑うような子にしたくはありません。転んでいる子を笑うなんてとんでもない話です。どのように子どもさんはお話をされたのですか。」担任という責任感と若さゆえの強さだったと思う。

▼今は父親になっている当時の1年生の彼。「あのときの怖かったことは今でも覚えている」と会う度に話てくれる。「あれから、親は先生を信じるようになった」と述懐する。父親になった彼が、参観日に珍しく行った。廊下で、「厳しくて子どもが可愛そう」と母親同士のひそひそ話に、「先生を信じない親がいい子を育てる筈がない」と言いきる。(吉永幸司)