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文明としての教育 著者は中教審会長である。しかし、学習指導要領がどうこうという話ではなく、教育の本質に関わる著者の考えが展開されている。 「教育と文明には互いに相手を支えあう相互作用がある」として、西洋は古代ギリシアから、日本は鎌倉時代からの教育の歴史が明快に説かれる。その結果、中国にはない日本の西洋との類似性が明らかになる。 近代国家において、教育は国家の統治行為であるから、国民は無知である自由、無知である権利を持ってはいない。一方で教育は国民に対するサービスであり、国民が独立した個人として自己を実現していく営みを助けるという面がある。線引きするのは難しいが、この両面があるということは、なんとなく理解できるように思う。 学校教育について「教育は生徒にたいして経験の仕方や方法論を教えるもの」だという。すべてを経験することはできないし、経験をいくら繰り返しても行動能力が高まるわけではない。教室は行動のプロセスを教える場、練習の場なのである。 明日の授業をどうするかを始め喫緊の課題に迫られている教員にとって「教育とは何か」を考えている余裕はないかもしれないが、頭の片隅に置いておくことも必要ではないだろうか。 序 章 荒廃のなかの教室 第1章 学校教育はなぜ必要なのか 第2章 文明とともに 第3章 古代ギリシャから中世へ 第4章 ルネサンスからの歩み 第5章 鎌倉、室町、そして江戸 第6章 近代国家の成立に伴って 第7章 統治とサービス 第8章 国語、道徳、歴史 終 章 明日に向けて (常諾真教)
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