本棚  読書の腕前
岡崎武志 著 BK1
光文社新書 2007.3 780円
読書の腕前

 この欄では、新書版の新刊を中心に、読んでおもしろかったものや教員に役立ちそうなものを紹介しているのだが、選定に苦しむ月がある。毎月10冊も読めば、1冊くらいは紹介するに足る本に巡り会うだろうが、最近は「読書の腕前」が落ちていて、とてもそんなには読めない。書名に惹かれて買ってきても、読み切れないこともある。趣味で読んでいるのだから、それでもいいと思っているのだが。

 しかし、本を集め貯めるのが好きになると、もはや道楽である。「ツン読」が増えても、読書案内や読書術の類の本はつい買ってしまう。本書の著者は「年に三千冊増えていく本との闘い」をしているという。どんな読書をしているのか知りたくなる。

 よく見ると、「ツン読」には、ちゃんと「読む」という文字が入っている。現物が部屋にあることで、いつも少しずつ「読まれている」のだ。プロ野球のピッチャーが、投げないまでも、いつもボールをそばに置き、ときどき触ることでその感触を確かめるようなものだ。だから「ツン読」を避けようとする者は、いつまで経っても「読書の腕前」は上がらない。これ、確か。

 こんな「ツン読」の効用を読んで安心するのである。(常諾真教)