魅力ある授業づくり 〜初任者研修〜
高 野 靖 人

 9月29日に京都女子大学で「実践的高度指導力セミナー」が実施された。メインディシュとして笠原登先生の講演が位置付けられているセミナーの前菜もしくは食前酒的な「基調提案」を行った。テーマは、「魅力ある授業づくりの実践と課題」である。

 昨年度と本年度、初任者研修の拠点校指導員として、初任者の授業を毎日参観している。しかも、1校固定ではなく、1年に4校4名の初任者の教室を日替わりに訪れて、参観をしてアドバイスをしたり、別室で担任としての基礎等を指導したりしている。こうした経験から、若い先生や教師を目指す学生さんへのメッセージを前述したテーマでまとめてみた。

 まず、「魅力ある授業とは何か」を考えた後、その「魅力ある授業づくり」のための仮説として、
 @「専門性」を高める。
 A「児童理解」を深める。
 B「人間的魅力」を高める。
を提起した。
 そして、そのための第一歩(若い先生編)として、次の4点を提示した。
 @自分の授業を直視する。(ビデオ・録音機等の活用)
 A自分の授業を評価してもらう。(できるだけ公開する)
 Bできるだけ多く先輩の授業を参観する。
 C指導案・指導略案を書いて授業する。

 初任者は、週10時間の在勤校研修が課せられている(年間300時間)。学期に一度は、研究授業を行って先輩の指導も受け、普段の研修の中で授業を見せたり、見せてもらったりという機会も多い。毎週指導略案も書いている。
 在勤校研修だけでなく、学校外で行う県や市の研修も多い初任者なので、研修に追 われて忙しいとも言えるが、反面、多くの先輩たちが一人前の担任となるように手を 貸してくれる恵まれた一年とも言える。大切なのは、いかに研修を主体的にとらえる か。即ち、「子どもにとって魅力ある授業」に一歩でも近づけるための「力」として 認識できているか。これが、ポイントである。

 セミナーから1週間ばかりたった10月のある日。その日の勤務校に出勤すると、朝、初任者が、
「今日の算数を、一度ビデオに撮影していただけませんか。」
と、依頼してきた。デジタルビデオカメラとテープも準備されている。もちろん、研究授業ではなく、日々の普通の授業である。自分の授業や子どもの様子を客観的に振り返ってみたいからだという。そうした意欲が大事だとほめておいて、その45分はカメラマンとなった。そのビデオを見ながら研修という方法もあったが、嫌みなので、初任者の自主性に任せてある。
(大津市立仰木の里小)