▼理科テストで45点の答案用紙を手にしたとき、顔色をさっと変えた子がいた。そのまま、テストを丸めてゴミ箱へ。友達に見つけられ机の奥へ押し込んでしまった。「家で叱られるの」と尋ねると顔を曇らせ涙を滲ませた。

▼この子の場合は、誰かに叱られるという目に見えない姿におびえる涙であったが。「できなかったのは、自分の足らないところを確認できたのだから、しっかり理解する大事な勉強なんだよ」と言ったが、この子には通じなかった。

▼涙にもいろいろある。怯えてどうしようというのがある。努力をしたがそれが実らなかったという悔し涙もある。できれば後者の方いい。1年生の子が字が覚えられないと言って泣いた。その子に「あなたは勉強のことで泣いたのだから偉い」とほめたという先人の言葉が蘇る。

▼学ぶということはいつもよい状態ばかりではない。分からない、できないに真剣に取り組むことが大事なのだが。

▼全国学力調査の結果がでた。早速、上位にどの県、下位がどこというように新聞は報道している。中央教育審議会は「審議のまとめ」を発表した。教育に対する話題が多い。得点のよさを求めるだけでなく、学ぶ意欲を持ち続けること、授業や指導に目を向けたい。

▼45点のテスト用紙を大事にする子、つまずきを生かす子になって欲しいと思う。(吉永幸司)