書いてあることに「?」を付けて読む
西 村 嘉 人

「今までと全く違った読み方でこの文章を読んでいきます。」
 授業の導入の私の言葉。
 子どもたちは「どんなことをするの?」と戸惑っている顔。
「文章に書いていることをそのまま鵜呑みにして『分かった!』と思わないで、『本当かな?』『おかしいで、この説明…』と疑いながら読んでいきます。疑いをもったところに付箋を貼り自分の考えをメモしていきましょう。」
と話を続けた。子どもに分かるように『いちゃもん読み』と命名し、一人学習をスタートさせた。

 学習に取りかかるまでは、ネーミングの面白さもあって意気込んでいた子どもたちだったが、読み始めたとたん悲鳴を上げる。
「先生、あかんわ。なんか、読んでるうちに納得してしまう。」
「大人の人が書いた文章にいちゃもんつけるのって難しいわ。」
と気付いたのである。
 そこで、学級全体で少し時間を取り、一文一文立ち止まりながら文句がつけられるかどうかを考えてみる学習を示した。
「へえ、こんなに考えんと文句ってつけられへんの。」
と、簡単に考えていた子どもたちの声。その後の子どもたちの読み方が一変した。

 2時間の一人学習の後の交流では、
「長いドアの取っ手のことだけど、目の不自由な人にとっては長くても短くても関係なくて、これなら自動ドアの方がいい。」
「電車の段差をなくす板は誰が出すの。その板があるところは人が立っていたら邪魔になってしまうし、乗れる人数が少なくなる。」
「ユニバーサルデザインが当たり前の世の中になることがわたしの提案ですって書いているけど、提案なのでみんなが言った不便になることをもっと考えないといけない。」
等の考えが次々と出てきた。なかには子どもらしい一面的な文句もあったが、それぞれによく考えた主張が出てきた。

 このような読み方の交流をした後で、「多くの人が使える住みやすい街作り」のための課題作りを進めた。
 ・身近にあるユニバーサルデザインを調べて、よさを伝える。
 ・車いすの人にとっての便利・不便を考える。
等の課題を設定し学習をさらに進めた。
 「?」をつけながら読み進めることは、「分かったこと」を見つける以上に難しいが、思考力を鍛えるためにこのような読み方をもっと経験させて行く必要なあることを感じた授業である。
(彦根市立城南小)