巻頭言
水 中 花
水 口 と な み

炎えている恋のままなり落椿

雛の目どこから見ても真正面

蝶死して愛のかたちに翅ひらく

薫風に車体膨らませ来る電車

碧い水入れても朱かき水中花

色褪せぬことの淋しさ水中花

命まで透けて海月は花のごと

少年のどこかに翳り天高し

観世音秋思のまぶた伏せ給う

バックミラーに聖夜の街がついてくる
(俳誌『花藻』同人)