役割読みで、場面をくらべて「ちいちゃんのかげおくり」
川 那 部 隆 徳

 「ちいちゃんのかげおくり」(光村3年下)には、物語の最初と最後に、かげおくりをする場面がある。その二度のかげおくりの違いを、音読の比較からとらえることから、ちいちゃんの心情や場面の状況の変化をとらえることをねらった。
 役割は次の通りである。
@お父さん Aお母さん Bお兄ちゃん Cちいちゃん D地の文

【一度目のかげおくりの役割読み】
@ ひとうつ、ふたあつ、みいっつ。
D と、お父さんが数え出しました。
A ようっつ、いつうつ、むうっつ。
D と、お母さんの声も重なりました。
C あれ、お母さんしか読まなかった。
C お父さんも読まないといけないと思う。「お母さんの声も重なりました」とあって、お父さんの声にお母さんの声が重なるわけだから、お父さんとお母さんの二人で読まないといけないと思う。
T よく気がついたね。そうすると、この続きは、誰が読むといいのかな。よく考えて役割読みをしていこう。
@ABC ななあつ、やあっつ、ここのうつ。
D ちいちゃんとお兄ちゃんも、いっしょに数えだしました。
@ABC とお。(後略)

【二度目のかげおくり】 
C ひとうつ、ふたあつ、みいっつ。
D いつの間にか、お父さんのひくい声が、重なって聞こえだしました。
C@ ようっつ、いつうつ、むうっつ。
T どうして、ちいちゃんと、お父さん役の二人がが読んだのかな。
C 「重なって聞こえだしました」とあるから、ちいちゃんとお父さんの二人が言っていると思ったから。
T なるほど、一度目のかげおくりのときのように、「重なって」ということを考えたわけだね。
C でも、ちょっと違うような気がして、「いつの間にか」とあるから、ひょっとすると、「ひとうつ、ふたあつ、みいっつ。」の最初はちいちゃんだけだけれども、最後の方から、お父さんも言っているんじゃないかな。(後略)

 役割読みをすることによって「重なって」「聞こえだした」などが表す状況について具体的に吟味でき、さらに、二度のかげおくりの役割読みの違いを考えることで、読む順番が反対、ちいちゃんの体が弱ってきていること、家族に会いたい願いなどに気づくことができた。
(滋賀大学教育学部附属小)