▼夏の甲子園で佐賀北高校を初優勝に導いた白崎監督が、生徒に課したものは「体力づくり」と「心のキャッチボール」だという。心のキャッチボールについては、監督就任以来、部活への感想や不満を日誌に書かせ赤ペンで返事を書いて渡すという方法、つまり、日記の指導である。「文字の方が本音が出し合える」と。

▼文字で心を伝えることの大事さは今に始まったことではない。心が通うにはそれだけの時間が必要であり手間がかかる。信頼関係が前提になる。監督と選手がどのようなことを書き合ったのかについては推測でしかないが、書く過程で育つものが多く価値があったのだろう。

▼日記指導が大事なのは、書く力をつけるというような技能面だけではない。日頃から、心を通わせる場を持っているということが大事なのである。

▼三年生を担任した時、毎日ペットのことばかり書いてきた子があった。ところが、そのペットについて書く分量が急に少なくなった。不審に思って、様子を見ていると、友達との関係がうまくいっていないことが分かった。さりげなく、話を聞くと人間関係でかなり躓いていることが分かった。

▼継続して書かせると変化が見える。大事なことを見逃さないために変化を察知する力が必要である。改めて日記の効果を考える夏であった。(吉永幸司)