第70回国語教育全国大会
他人になりきって書こう 〜聞き書き〜
蜂 屋 正 雄

 先日、東京で行われた日本国語学会主催第70回記念国語教育全国大会に参加した。
 提案授業・書くこと・高学年の分科会では山口県光市教育委員会指導主事・中村正則先生の授業を見せていただいた。

 子どもたちにとって書く活動とはどういう意味を持つのか、「なぜ、書くのか」ということが実感できるような学習をしたい。「書くことで自分の考えがまとまった」「書いて良かった」という子どもの声が聞きたい、とおっしゃっていた。

【研究仮説】
 書けない子どもは、自分自身を客観視できないのではないか、また、一人で黙々と書くことに抵抗があるのではないか。そこで、他人と関わりながら、自分自身の言葉で書くことの楽しさを味わうことができれば、自分の言語世界を広げながら楽しんで書く力をつけさせることができるのではないか。

【学習活動】
 二人組で互いに友だちの親像を聞き取りながら、相手になりきって親の紹介や親への思いを書く。
 本時はその例として、伊藤四朗さんの「おやじのせなか」という教材を紹介し、表現技法や本人になりきって心境を想像しながら書くことについて理解を深める授業であった。

 はじめに、「おやじのせなか」の前半部を読み、「おやじさんの性格がわかるところに線を引いてみよう」と発問され、それを元に伊東氏の父親像について話し合いが進んだ。その中で、「短気で」「きつい」「危ない」など、性格を端的、「抽象的」に表現している部分と「口よりも先に手が出る」「知識もないのに電気メーターをはずして数字が進まないようにした」といった、性格をエピソード的、「具体的」に表現している部分に分けて板書し、表現内容について気づかせていた。また、「それじゃあ、伊東さんはお父さんのこと嫌いなんだね」と発言され、「違う」という子どもたちに理由を発言させる中で、父親への愛情も確認された。

 次に、後半部分をかくし、「テレビに出るようになったときは、ほめられた」「ほめられたことは他にない」「病気でなくなった」「器用さは受け継いでいない」といった、4つの情報を示し、「続き」を書かせた。ここでは、逆接の接続詞を使うこと、語尾や表現技法についても確認されていた。
 10分書いたところで、「情報が足りない、もっと知りたいことありますか」と言われ、「どんな病気で、いくつぐらいでなくなったのか」など、一度聞いて「足りないな」「もっと詳しく知りたいな」ということを引き出し、実際に友だち同士で書きあうときももう一度聞けばよいということを伝えられていた。
(草津市立笠縫東小)