教材を読む(1) 「アップとルーズで伝える」
吉 永 幸 司

1 段落の構成を解きほぐす
 教材は8つの段落と4枚の写真で構成されている。第1段落と第2段落と第4段落、第5段落は写真の説明。第3段落は前の2つの段落をまとめ「アップとルーズではどんなちがいがあるのでしょうか」という問題の提示。第6段落は、「アップとルーズにはそれぞれ伝えられることと伝えられないことがあります」とまとめている。
 文章の意図は「アップ」と「ルーズ」の意味を説明しながら、テレビや新聞の画面や写真は「受け手が知りたいことは何か、送り手が伝えたいことは何かを考えている」ということである。

2 語や文、文章を関連づける
 第3段落に次の文章がある。
<初めの画面のように、広いはんいをうつすとり方を「ルーズ」といいます。次の画面のように、ある部分を大きくうつすとり方を「アップ」といいます。>
 この文章だけを読んでいると「アップとルーズ」の意味が分かればよいようにみえる。しかし「広い」「ある部分」を確かにしないと理解が曖昧になる。文章では「会場全体・コート全体・観客席」と関連させて意味をはっきりさせる必要がある。同じように「ある部分」は「コートの中央に立つ選手・ホイッスルと同時にボールをける選手」というように「選手」と結びつけて考える必要がある。
 また、4段落と5段落では「アップでとると、細かい部分の様子がよく分かります。」と「ルーズでとると、広いはんいの様子がよく分かります。」の対比、「しかし、走っている選手以外のうつされていない多くの部分のことは、アップではわかりません。」「でも、各選手の顔つきや視線、それから感じられる気持ちまでななかなかわかりません。」と段落の説明が対応していてわかりやすい。

3 叙述を丁寧に読む
 第1段落では、最初は写真を客観的に説明し、後半に「会場全体が静かに、こうふんをおさえて、開始を待ち受けている感じが伝わります。」と結んでいる。同じく第2段落では「目はボールの方を見、少しきんちょうした顔つきです。」と結んでいる。いずれも「興奮をおさえて」とか「きんちょうした」など臨場感を添えている。同じく、第4、5段落では「全身で喜びを表しながら」や「勝利を喜び合っています」と臨場感を伝える表現をしている。段落を分析すると読む力が確かになる。
 つまり、事実を正確に伝えようとする文と感情を伝える文を見分けるのである。
(京都女子大学)