授業の知恵 「おれはかまきり」の授業
吉 永 幸 司
1.視写から始める その授業は視写から始めた。教材は「おれはかまきり」(工藤直子) おう なつだぜ おれは げんきだぜ あまり ちかよるな おれの こころも かまも どきどきするほど ひかってるぜ の詩である。いきなり読ませてもいいのだが、平仮名ばかりなので視写には最適。「おう、1マスあけて、なつだぜ、行を変えて」と指示が簡単。 2.音読でつなぐ 4行目にいこうとしたところでノートに書いていない子に気づく。「書きましょう」と指示をすれば、教室の雰囲気をこわすのでとっさに「今までの所を順番に読んでいきましょう」と1行づつよませた。勿論、1人ずつ。そして、書けていない子に、書くことを指示。3行目まで書けるまで、繰り返し座席の順に読ませた。少し時間をかけたが全員が書いたことを確認して4行目に。 3.1人は3分の1 1人の子が書けていないことに気づいて音読という方法をとっさに選んだ。後で考えてみると、1人の子ではなく、視写という活動に慣れていないので、書けない子がかなりいたと考えた方が正しい。1人の子ではなく、そのような傾向の子がいると見る。この考えは、多くの授業で生かせる。「わからない」とつぶやけばその声はクラスの3分の1はそう思っていると受け止めると、授業に謙虚さが出てくる。 4.範読は目標の具体的な姿 視写が完成したところで音読。1人で読ませたり一斉に読ませたりした。満足する読みではない。 「先生の真似をして、詩を読みましょう。」 と、指示をして模範音読。しかし、期待したようには読まないので3回読んだ。そのうち、音読がよくなった。 模範音読は「このように読んでほしい」という気持ちを具体化したもの。「気持ちを込めて読もう」とか「大きな声で読もう」という抽象的な指示よりよいと思っている。それは授業の目標であるから。読みがよくなった段階で、上手な子に指名。その子の真似をしてまた読ませる。上手の視点は「声が大きい」「口の開け方がいい」など示した方が分かりやすい。 5.活動は具体的な作業で 「かまきりらしいところに線を引きましょう」と指示をした。「線を引く」という具体的な活動が授業を引き締める。 (京都女子大学)
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