本棚  教師格差 ダメ教師はなぜ増えるのか
尾木直樹 著 BK1
角川oneテーマ21 2007.6 686円
教師格差

 教育再生会議の審議や提言についての報道を見ていると、学校現場を知らない人々の思いつきや企業の論理が学校に有効であると思えないことが多い。しかし、本書で述べられている教育現場の現状分析や「教育再生」への提言には納得できる。

 例えば、指導力不足教員を排除する目的で導入される教員免許更新制。指導力不足教員がいることは事実である。しかし、10年も待って排除するのでは遅すぎる。子どものことを考えればすぐに対処すべき問題である。大多数の問題のない教員に対して10年ごとに研修を義務づけることには膨大な税金が必要であるが、それだけの効果があるか疑問である。

 また「目標管理型評価」による弊害も指摘されている。評価を気にするため、学級に問題があっても同僚や学年主任に相談しにくく、何とか自分で解決しようとする。その結果、周りの教員が知った時には学級崩壊が取り返しのつかない状態になっているというのもあり得る話である。教師を個別的に分断して競わせるのではなく、「同僚性」「協同性」が必要である。評価が不要なのではないが、「学校現場は教員評価が主目的の場ではなく、教師にとっての学びの大学院である」と著者はいう。

 序 章 病める教師−−教育の現場から
 第1章 教師力は落ちたのか
 第2章 「逆風」にさらされる教師
 第3章 教師の条件
 第4章 「教育再生会議」に見る、教師の未来
 第5章 「教育再生」への提言
(常諾真教)