「カレーライス」
中 嶋 芳 弘
6年生の国語、第一教材は「カレーライス」(光村6上)である。 「6年始まりの教材だし、先生はすらすら読めたら終わってもいいと思っています。 みんなどのくらい読めるのかな。」 5月初め、担任の体調不調で補欠授業に入った6年のクラスで音読を指示する。 重松清さんの「カレーライス」。子どもたちの音読の声が続いていく。じっと聞い ると、どこにでもいそうな今どきの少年が主人公の物語であった。父親とのやり取り はまるでそのまま子どもたちの家の風景のようでもある。物語の世界に浸って聞き 入ってしまう。お父さんが体調をくずしてしまう展開になった時には、もしかして大 病かと思ったが、6年生の教材にそんな物語を持ってくるはずもなく、ただの風邪。 それをきっかけに親子で作るカレーライスはなかなかうまそうであった。子どもたち の音読もまずまず。 「この物語、何日間のことが書いてあるのかな。」 「2日間や。」 「違う。お父さんがコード抜いたのがゆうべでこれを1日目とすると、丸1日たっ て……4日間や。」 本文に立ち返って発言し始める子どもたち。チャイムの音。 漢字の練習や次の「漢字の形と音・意味」に進みながら、担任の復調を子どもたち と共に待っていたが、病気治癒には時間がかかりそうである。緊急の体制を整えて、 児童生徒支援加配教員の私が担任代行をということになった。 そんなわけで、横に置いておいた「カレーライス」に戻って学習を進めていく。 ちょっぴり大人になってきたひろし少年といつまでも息子を子どもだと思っていた父 親の心の揺れを「カレーライス」を軸に描かれた物語。この物語の世界を共感的に読 みとらせて終わろうと授業を進める。 「どう、この物語、何日間のことかわかったかな。」 この時間を追いかけて本文を探る読みも楽しいのだが、話し合い活動につい てこられない子も少なくない。すらすら読めて物語の世界をきちんとつかめても、自 分の言葉でそれを相手に伝わるように言葉で表すのは難しいのである。「そうか、5日間のことだね」「○○君のがあってたんだね」ともっとも積極的に発言していた △△。 「この物語に出てくる『甘口』という言葉には、どんな意味が込められているので しょう。」 「お子さま」「子ども」拍手。 「そうですね。では、『中辛』という言葉には、どんな意味が込められているのかな。」 「大人」 「作者は『カレーライス』という題名にどんな思いを込めたのかな。ノートに書きましょう。」 「成長」「親子のきづな」「ぼく大人になったんだ」 (彦根市立河瀬小)
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