主語を明確にして読む「たんぽぽのちえ」
岡 嶋 大 輔

 説明文「たんぽぽのちえ(光村2年上)」は、日常の中でよく見かけるが故にそのまま通り過ぎてしまいそうな「たんぽぽ」に立ち止まり、その不思議さに思いを巡らせるきっかけを作ってくれる文章である。
「花がしぼむんだな」「じくがぐったりするんだな」と、「何がどうする」「何がどうなる」という現象を順序通りとらえることも大切にしながら、たんぽぽの「ちえ」を読み取ることができるようにと単元を設定した。

 単元の中盤。一つひとつの動きや様子を表す言葉の主語は何なのかを確認していった。主語になるものとしては、「花」「じく」「たんぽぽ」「わた毛」「たね」等が主である。その確認の最中「たんぽぽ」が主語になるはずの文章に特に立ち止まるようにした。
 例えば、
「花とじくをしずかに休ませて、たねに、たくさんのえいようをおくっているのです。」
という文では、「何が何を休ませるのですか。」と問うた。
 そうしている内に、
「人間でいうと、花が掌で、じくが腕で、たんぽぽっていうのは全部合わせた人間みたいなものやわ。」
「たんぽぽは、人間の頭みたい。」
「たんぽぽは、花やじくの監督みたい。」
というように、「たんぽぽ」という主語は、他とは少し違うという考えが出始めた。

 「たんぽぽ」という主語を「人間」や「人間の頭」「監督」といった例えで表すことが分かりやすかったようである。そこで、「では、なぜ『たんぽぽ』監督は、花や軸をこのように動かしたのでしょう。」と問うた。
@「花と軸を休ませたのは、種にたくさんの栄養を送るためです。」
A「花の軸を倒れさせて、種にたくさんの栄養を送るようにしていると思います。」
 「綿毛ができるのは、種をふわふわ飛ばすためです。」
等とたくさん出し合えた。
 右にある@とAのように、言い方が違っても同じ内容であるものもたくさんあり、仲間分けをしながらまとめていった。そうして、「○○するために○○する」という形で4つにまとめられた。

 教材文の題名にある「ちえ」自体が擬人的であるので、子どもも何か擬人的に例えながら読むことで文章の全体像がつかめたようである。そのために、登場する主語を明確にしておくことが有効であることが分かった。
(滋賀大学教育学部附属小)