本棚  ウェブ進化論 −本当の大変化はこれから始まる−
梅田望夫 著 BK1
ちくま新書 2006.2 740円
ウェブ進化論

 インターネットが始まって10年。毎日当たり前のように使っている。映画が見られるようになったり、ブログで簡単に情報発信ができるようになったりとずいぶん便利になった。しかし、見えているのはネットの向こうにある膨大な世界のほんの一部である。インターネットが今どうなっているのか、この先どうなっていくのか、本書はそれを知らせてくれる刺激に満ちた書である。

 日本では、誹謗中傷の書き込みや有害サイトなどインターネットの「暗」の部分が強調されるが、本書では開放性による「明」の部分に目を向けている。
 その1つが、リナックスに代表されるようなオープンソース現象である。不特定多数の人々が無償でソフト開発にかかわり、無料で使えるソフトウェアができあがっている。ブリタニカ百科事典に匹敵するようなウィキペディアもネット上で編集されている。このような仕組みを、Wisdom of Crowds(群衆の叡智)と呼び、「自動秩序形成システム」が生み出されていく可能性が大きいという。

 序 章 ウェブ社会
 第1章 「革命」であることの真の意味
 第2章 グーグルー知の世界を再編成する
 第3章 ロングテールとWeb2.0
 第4章 ブログと総表現社会
 第5章 オープンソース現象とマス・コラボレーション
 第6章 ウェブ進化は世代交代によって
 終 章 脱エスタブリッシュメントへの旅立ち

 本書を元にして行われた、作家平野啓一郎との対談ウェブ人間論(新潮新書 2006.12)を併せて読むと、Web2.0と人間の変容についてさらに興味がわく。(常諾真教)