言葉をつないだり、比べたり
伊 庭 郁 夫

 個別懇談会で、ある保護者が、
「参観日での、サーカスのライオンは感動しました。子どもたちがあの長いお話を覚えていたのと、その内容が心に残りました。」
と言われた。
 参観日では、全員が起立して教室の後ろの保護者の方を向いた。
「覚えているところは、立ったままで読みましょう。」
と指示して、全員で一斉音読が始まった。しかし、座って読む子はほとんどいない。しっかりした読み声が教室に響いた。

 この学習で心がけたことは、3点である。

 第一は、書き込みの学習を展開したことである。言葉と言葉をつないだり、比較したりする学習である。子どもたちには、書き込み用のプリントを用意した。また、教科書を拡大コピーしたものを巻物にして、学習方法を確かめた。
「サーカスのライオンの物語全体で、言葉と言葉がつながっている所がたくさんあります。見つけた人はいますか。」
「はい。『町はずれ』は町のはしっこでさみしいと思います。だから夜になって、お客が帰ってしまうと『サーカス小屋はしんとした』とつながっています。」
「私は、1の場面の「アフリカのゆめを見た」が、4の場面の「昔、アフリカの草原を走ったときのように」につながっていると思います。」
 発言した子どもの名前も、掲示用の巻物に記入する。つながりと比較を色マジックで区別しながら、次々と言葉見つけをしていく。私が教材研究した以上の発見をする子どもがいて驚かされた。

 第二は、板書を工夫したことである。子どもたちのワークシートには、それぞれの場面で「 」なライオン像を考えさせる。そして、場面ごとにその理由を考えさせる。その発言を、矢印や色チョークを使いながら、子どもの理解を助ける板書を工夫した。前もって、板書計画を考えておくとスムーズに子どもたちの発言を吸い上げることができる。

 第三は、音読である。1人が読み違えるまで続ける。最初は、数行で交代する子どもが多かったが、次第に数ページ読み続ける子どもが現れる。
 ある日、3人の児童が話しかけてきた。
「先生、全部覚えました。」
「えっ、すごいなあ。じゃあ、みんなの前でやってもらおう。」
 3人は見事に暗誦した。聞くところでは、サッカーのスポ少で待ち時間を利用して覚えたという。この3人に刺激されて、暗誦が広がっていった。
(大津市立和邇小)