「書く」を繰り返す
吉 永 幸 司

 海東さん(青柳小)の授業を参観。概要を次のようにまとめた。

(1)授業の概要
 「ニュース番組作りの現場から」(光村5下)の教材を理解し、「工夫して発信しよう」という活動を設定した単元構成。参観した授業の目標は、「強く訴えたいことをどのような言葉で表すと効果があるか」である。その概要は次の通り。
 @事件を伝える2枚の写真について感想を発表する。
 Aニュースとして伝えたい写真を選びメモ用紙に記号を書く。
 B選んだ理由をくわしく書く。
 C強く訴えたいこと、強調したいことを短い言葉で表す。
 D短い言葉を吟味し合う。

(2)働きかけと子どもの反応
 授業は2枚写真を提示し、写真から受けた印象を発表することから始まった。提示したのは[A ニューヨークのビルが燃えている写真][B 埋もれている子どもを救い出している写真]であった。テレビで繰り返し見ているので恐ろしさや命に対する思いを子どもたちは素直に発表した。
 その発表を生かして、ニュースとしてどちらかを選び、記号を書くことが次の学習活動であった。感想を自由に話し合っている段階では、気楽に発表をしていた子どもたちであったが、「ニュース番組にするとしたら」という課題を受け、慎重に写真を見る等意識が高まった。[A][B]のどちらかを選ぶという選択・決定という活動が意識を高めていった。
 続いて、選んだ写真の理由を書くという活動になった。ニュースとしてどのように伝えるかという意識は、[A]ではテロ、[B]では救助をキーワードにして何を伝えるのかを自らに問いつつ理由をまとめている子どもたち、真剣に考えをまとめる時間が確保された。
 学習のまとめは、短い言葉で写真を説明する言葉を選び短冊に書くという活動であった。

(3)授業の考察
 授業全体が緊張した雰囲気で進んでいった。その緊張感を支えたのは、「書くこと」を繰り返したことである。書くことで考え、言葉を選ぶ姿が見られた。
 最初は、選んだ写真の記号を書く活動であった。書く活動は長い文章を綴ることを思い浮かべるが、記号や番号を書くことも大事にすれば、考える学習へ広がる。
 2回目の書く活動は、写真を選択した理由の記述である。3回目は、短い言葉にまとめることを目的にした書くである。考えを広げたり焦点化したりした多様な活動が巧みに織り込まれていたのが学習効果を高めていた。意識を高めるには、語彙を提示し考えの幅を広げる方法もある。今後の工夫に期待したい。
(京都女子大学)