認知特性に応じた「書くこと」の指導 〜観察記録を書こう〜
池 嵜 繁 伸

 今年度4月から知的障害児学級を担任している。一人ひとりの子どもたちの教育的ニーズに応じて適切な教育的支援を行うという特別支援教育の考え方を大切にしてきた。障害児学級だけでなく通常学級に在籍しているLD、ADHD、高機能自閉症等を含めた障害のある子どもたちの生活や学習上の困難を改善するために一人ひとりに応じた支援を行うというのが、特別支援教育の考えである。
 それぞれの子どもの認知の特性やその子の得意な学習スタイルを意識し個々に応じた指導を行うということは、障害のあるなしに関わらず、すべての子どもに通じる教育の考え方だと言える。

 A児は、耳で聞いたりしゃべったりして覚える聴覚記憶が優れており、聴覚型の言語活動が得意な子どもである。反面、一字一字は読めるがまとまった単語として読むことができにくかったり、文字の形を覚えるのが苦手であったりといった視覚型の言語活動に課題がある。
 そこで、日常的な書く活動と並行して、『観察記録を書こう』という単元を設定した。

単元の目標
・動植物に関心をもち、進んで観察記録を書くことができる。
・観察して見つけたことを短い文章で書くことができる。

指導計画(全9時間)
第一次…観察記録の書き方を知る。 (1時間)
 ・写真と観察記録の例文を示し、書き方を教える。 
第二次…観察記録を書く。 (5時間)
 ・選んだ対象を観察し、ワークシートに書く。
 ・記録用紙に観察記録を書く。 (3時間)
第三次…観察記録を作文にまとめ発表する。
 ・記録用紙を選び、原稿用紙に書き写す。

指導のポイント
 聴覚型の言語活動が得意で、「書くこと」に苦手意識をもつA児の認知特性に応じた指導を工夫する。
◆見たいものを切り取って見る力を補い観察力を身につけさせるため、対象の目のつけどころをアップで撮影した写真数枚を手がかりとして提示し、それぞれカードに文章を書かせる。
◆観察して見つけたことを教師との対話の中で音声言語化し、文字言語へとつないでいく。
◆カードに書いた文章の順序を考えさせ原稿用紙に書き写させる。長い文章を書くことが苦手なA児も、カードを書きためることで意欲的に取り組めた。

 子どもの得意な学習スタイル(聴覚型・視覚型等)や認知特性という視点で一人ひとりの実態を捉え直すことにより、個々のもつ言葉の力を伸ばしていきたい。
(彦根市立平田小)