音声言語と文字言語の関連から
池 嵜 繁 伸

 4月から知的障害児学級を担任している。6年生2名、5年生1名、2年生1名の計4名のクラスである。
 子どもたちのことばに関わる特徴として、個人内での音声言語と文字言語の習得レベルに著しい差が見られることがあげられる。
 日常生活や学習場面で音声言語による豊かなコミュニケーションができる反面、文字言語を介した「読むこと」「書くこと」の力が十分身についていないのである。

 例えば、校外学習の報告会をクラスで開いた際、経験したできごとを感想をおりまぜながら、何の資料や原稿もなしで詳しく説明することができた。
 また、初めて聞いたかなり長い物語のあらすじを、数枚の挿絵をもとにして、物語中の言葉を使いながら話すことができた。

 ところが、文字の習得が不十分であるため、短い文を書くことにも抵抗を示し、簡単な文章を音読する際にも、言葉のかたまりとして文字を捉えて読むことが難しいという面もあった。
 この音声言語優位の子どもたちの特徴として注目すべき点は、紙芝居や絵本の読み聞かせを大変好み、かなり長い物語でも集中して聞くことができることである。
 このような実態をふまえ、次のような「書く」活動に継続して取り組んでいる。

視写(なぞり書き)
 市販の視写ノートやワークシートを用いている。視写の難しい子どもには、教科書を拡大コピーしたものにトレーシングペーパーを重ねてなぞらせている。書かせた後必ず声に出して読ませ間違いを直させるようにしている。文字をただ記号の羅列として機械的に写し取っていることに気づき、言葉のまとまりとして文字を写すと速く写せるということを指導している。

日記(作文ノート)
 朝の活動の時間を活用して、昨日経験したことを中心に短い文を書かせている。十二マスの国語ノートを学年に応じた行数に裁断し表紙をつけ、短冊状の日記帳を自作した。市販のノートなら「4行しか書けなかった」となるところが「1ページ書けた」「もう1ページ書こう」という意欲につながり、現在2冊目。書いた後に、声を出して読ませ、その場で表記の間違いに気づかせ、誉め、コメントを書き込んでいる。

 言葉に関する情報は、一般的に耳〔聴く〕か目〔読む〕のどちらかから入る。そして、〔話す〕〔書く〕という形で出力される。文字言語として入力し、音声言語として出力する『音読』が脳科学の分野で注目されている。
 音声言語と文字言語の関連や出入力を意識した学習活動を工夫し、子どもの力を伸ばしていきたい。
(彦根市立平田小)