本棚  おもしろ古典教室
上野 誠 著 BK1
ちくまプリマー新書 2006.4 720円
おもしろ古典教室

 あとがきに編集者からの執筆依頼の言葉が引かれている。「これまでの入門書は、『元優等生による、今の優等生のための入門書』で面白くありません。上野先生なら、型破りのものを書いていただけると思いまして。」

 その面白さは、「古典を読むと立派な人になれるというのは間違いだと思います」という第1章のタイトルにも表れている。『孔子』や『荘子』の文章に触れて、「古典なんて古人のカスだ」「古典だからすばらしいのではない、その古典を読んでおもしろいとか、たのしいとか思う『今』と『自分』がすばらしいのだ」「言葉を手がかりにして考えたり、想像したりしないと、古典を学ぶ意味がない」と説かれる。

 第2章「こんな生き方をしたいと思ったとき…」、第3章「読むとこんなことがわかる、なんの役にも立たないけど」、第4章「人は遊びのなかに学び、時に自らの愚かさを知る」と続く。

 第4章では、『鳴神』を材料に歌舞伎鑑賞の手ほどきが、また、『宇治拾遺物語』と芥川龍之介の『竜』を材料に猿沢の池の見どころが語られる。

 著者は大学教授だが、高校での講義内容を元に書かれているので読みやすい。(常諾真教)