▼「かげおくり」って遊びをちいちゃんに教えてくれたのは、お父さんでした。出征する前の日、お父さんは、ちいちゃん、お兄ちゃん、お母さんをつれて、先祖の墓参りに行きました。その帰り道、青い空をみあげたお父さんがつぶやきました。「かげおくりのよくできそうな空だなあ」「えっ、かげおくり」と、お兄ちゃんが聞き返しました。「かげおくりって、なあに」と、ちいちゃんもたずねました。(略)「ちいちゃんのかげおくり」(あまんきみこ・光村3下)の冒頭場面である。

▼ある授業で、「お父さんは、何と言ったでしょう」「お兄ちゃんは、何と言いましたか」と、やたらと「何と言いましたか」という発問が飛び交っていた。子どもたちも心得たもので「かげおくりのできそうな空だなあと言いました」「えっ、かげおくりと言いました」と答えていた。いかにも文章を正確に読んでいるように見えたが、「つぶやきました・きき返しました・たずねました」を全て「言いました」に置き換えて読んでいるところが気になった。

▼この授業に限らず、言葉を大事にする、正確に文章を読むという目標を掲げながら、「言いました」も「つぶやきました」も同じように捉えさせていることが多い。国語の授業は言葉を大事にすることという当たり前のことを足下から見直し見たいと思うこの頃。(吉永幸司)