本棚  世にも美しい日本語入門
安野光雅 藤原正彦 著 BK1
ちくまプリマー新書 2006.1 700円
世にも美しい日本語入門

 画家と数学者との対談。小学校時代の師弟でもある。どちらも日本語教育の専門家ではないが、日本語について造詣が深く、発言も多い。

 なぜ美しい日本語に触れることが必要なのか。<美しい日本語に触れないと、美しく繊細な情緒が育たない。恋愛さえままならない。文学に一切触れず、「好き」「大好き」くらいの語彙しかない人間は、ケダモノの恋しかできそうもない。愛する、恋する、恋焦がれる、ひそかに慕う、想いを寄せる、ときめく、惚れる、身を焦がす、ほのかに想う、一目惚れ、べた惚れ、片想い、横恋慕、初恋、うたかたの恋……など、様々な語彙を手に入れてはじめて恋愛のひだも深くなるのである。>

 また、祖国に対する誇りや自信は、経済的な繁栄や軍事力ではなく、文化や伝統などの普遍的価値から生まれる。文化とは学問、芸術、文学などが含まれる。(まえがきから)

 「国語教育の見直しを!」の章では、小学校で国語の時間数が少ないこと、学年別漢字配当表の不合理性が俎上にあげられ、読書や暗誦の大切さが語られる。「日本人特有のリズム」「日本語は豊かな言語」「小学唱歌と童謡」「文語体の力」などの章でも、さまざまな例をあげながら、日本語の美しさについて語っている。小学校で英語、英語と騒ぐ前に、ぜひ一読を。(常諾真教)