第10回「新しい国語実践」の研究会滋賀大会
分科会VB報告「読むこと」
川 那 部 隆 徳

本分科会では、以下の三本の提案がなされた。

(1)福島真智子教諭(新潟)
心情を読み味わう力を育てる指導と評価の工夫 −少人数学習を取り入れた指導の試み−」(小六)
 物語文「山へ行く牛」を取り上げた学習である。子どもたちが物語の内容と自己の生活や意見とを比べながら読み進め、主人公の気持ちに共感しながら読み深めていくことをねらいとしている。これを、教材文の読み取り、感想を書く活動において、三つの能力別グループで学習を進めた。具体的には、人物相関図用と読み取り用の学習シートを複数用意し、選択させる、また、自分たちで、あるいは教師がグループの話し合いを進めるなど、各々のグループの実態に合わせた学習シートや学習形態を工夫している。自分のペースで学習を進めることができ、読み取りに深まりが見られたなどの少人数学習による指導の効果について報告がなされた。

(2)野口幸司教諭(徳島)
反復により言葉の力の定着を目指した単元構成 −インタビュー名人になろう・本は友達/千年の釘にいどむ−」(小五)
 既習の「インタビュー名人になろう」の学習を生かして、ドキュメンタリー作品の登場人物に、インタビューを行うという活動を設定している。相手の答えを想定してインタビューの問いを考えることによって、段落の小見出しを考えたり、ロールプレイによって学習意欲を高めたりすることがねらいである。さらに、「応用」として、グループで他のドキュメンタリー作品の学習を進め、問うことによる読解の効果について報告がなされた。

(3)望月 陵教諭(山梨)
展開を考えながら読むことの指導」(中二)
 説明文「モアイは語る」について、自分の読みの過程を客観的にとらえるために、自らの読みの視点を明確にして、文章の論理の展開を考えながら読み進めさせることをねらいとしている。題名や副題、問題提起となる段落ごとにその先の展開について、「主張−理由付け−事実」の関係でとらえ、グループでの話し合いを交えながら読み進め、文章全体の論理の展開を学習シートにまとめたことによって、生徒の関心を引くことができたという報告がなされた。

 それぞれの提案について参会者から活発な質問や意見が出され、最後に、助言者からは、言葉の働きに着目して正確に読むことが、作品を味わうことにつながるなどの国語科における大切にすべき学習の視点が示された。
(滋賀大学教育学部附属小)