本棚  フィンランド国語教科書
メルヴィ・バレ/マルック・トッリネン/リトバ・コスキパー著
北川達夫&フィンランド・メソッド普及会訳・編
BK1
経済界 2005.11 2000円
フィンランド国語教科書

 OECDの学習到達度調査で上位に位置するフィンランドの小学校4年生用教科書である。書名には「フィンランド・メソッド 5つの基本が学べる」と日本向けの説明が付いている。5つの基本とは「発想力」「論理力」「表現力」「批判的思考力」「コミュニケーション力」であり、これらが自然に身につくように構成されている。

 日本の教科書とは「手引き」が大きく違う。例えば『町ネズミといなかネズミ』の話では、「主人公はだれか」「わき役はだれか」「場所はどことどこか」など物語を読む上での基本的なことの他に、「この話は何時間くらいかかったか」「町ネズミの性格をあらわす言葉を選択肢から選んで、その理由を文中からさがせ」「この話の教訓は何か」など正答が1つではない設問がある。答えを見つけることより、自分で考えることやそれを表現することに重きがおかれている。いきおい授業は一問一答ではなく、議論の方向になる。

 新聞、ニュース、投書、調査報告図書館などの題材を扱う際には、実生活や社会とかかわっていくような視点がはっきりしている。また、この教科書を使えば、誰が授業をしても、一定の成果が上がるよう工夫されていると感じた。
(常諾真教)