見えるだけ書ける 書けるだけ見える 2
中 嶋 芳 弘

 「見えるだけ書ける。書けるだけ見える」これは、大学時代、書写・書道のゼミに学んでいたときに恩師から聞いた言葉です。
 けれどもこれは、何も書写や書道だけの話ではありません。よく似た話は、スポーツをしている方から聞くことがありますし、大工の棟梁から聞くこともあります。「習う」とか「教える」とか、そんな場面ではこのことを心していなければならないわけです。
 「書写の授業はだれでもできる」のは、確かですが、それは「見えた」分だけですから、教える側もさらに見えるようになるためには、学び続けなければならないと言うことです。

 作文指導を進める時、「相手意識が大切だ」「段落構成をしっかりと教えなければ」と「選材・選題が要だ」と言います。それはその通りなのですが、たくさんの文章にふれ、言葉のリズムの美しさや言葉の表すイメージの豊かさを感じとれる感性を大切にしたいと思います。「感じとれるだけ書ける。書けるだけ感じとれる」と言い直してもよいかもしれません。
 作文指導を進められるようにたくさんの文章を読むこと、自らも文章を書くことが大切なわけで す。
 そんなわけで、おすすめの3冊。

○「にほんご
 安野光雄・大岡信・谷川俊太郎 松居直編集 福音館書店
 30年近く前、初版が発行された本。ことばの世界のおもしろさ、深さ、広がりへと子どもたちを誘うために活用してきました。日本語はこんなにきれいな言葉なのだ。そしてまた、言葉はもてあそぶものではなくコミュニケーションの道具なのだと、人間としての基本的なことを優しい言葉で伝えています。

○「にんげんぴかぴか
 中公新書ラクレ こどもの詩2 中央公論新社
 詩人・川崎洋氏が1982年元旦から22年間、全国紙の朝刊で続けてこられた「こどもの詩」という連載がありました。その最後の3年間に選ばれた136編を掲載したのが「にんげんぴかぴか」です。子どもの感性はすばらしい。ふっと笑えてくるような、へえっと感心させられるような、ええっとびっくりするような表現にたくさん出会えます。

○「きむら式童話のつくり方
 講談社現代新書 木村 裕一著 講談社
 子どもたちに話して聞かせるために、お話を書いている先生は多いことでしょう。童話を書くということの意義やノウハウがぎっしり詰まった1冊です。作家になる方法にしても童話の書き方にしても、「そうなんだ」と納得がいくように書いてある。すぐにでも始められるそうな気がしてきます。
(彦根市立河瀬小)