様子を表す言葉を増やそう
蜂 屋 正 雄

 子どもたちは、あのねノートなどで書くことに徐々に慣れ、順序よく書くことができるようになってきた。しかし、「せんせいあのね、きょうは、ともだちのだいちゃんとあそびました。たのしかったです。」といったような文章で、「なにをしてあそんでいたの?」「どんな楽しいことがあったの?」と思わず問い返したくなることがある。
 そこで、「詳しく書く」ということをめあてに学習を仕組んだ。

 「先生が今からすることを見たとおりに書きましょう。できるだけたくさん書いてください。」と言って、教師がしたことをノートに書かせた。教師の意識としては「詳しく書かせたい」ということであるが、子どもたちには「たくさん書く」ということを目標にした。
 教師がしたこと。
 @廊下から扉を開けてはいる。
 A扉を閉める。
 B箱を手に持って、ゆっくり教卓まで歩く。
 C箱をそっと置く。
 D箱をのぞき込んで驚く。
 E指人形をだして、手にはめる。
 F「おはようございます」といって終了。

 子どもたちは、教師の動きを楽しそうにニコニコしながらも、真剣に見ていた。
 一度目は、「せんせいがとびらをあけてはいってきた。はこをあけるとピーちゃんが出てきた」というような、あのねノートと同様の簡単な文章が多かったが、「そっと入ってきた」「ゆっくり入ってきた」「まっすぐつくえにむかって」というように、様子を詳しく書けた子どもの文章を紹介し、もう一度書かせてみた。

 子どもたちは見ながら書くことはできないので、二度目を書くときには、あと三回、同じ動作を繰り返した。
「しのびあしでこっそりとあるいて、あしはそーっとそーっとあるいてくると……」
「せんせいが、とびらからまっすぐでてきました。せんせいがもっていたはこをつくえにおきました。せんせいがもってたはこのなかからぴーちゃんがでてきました。そのなかからピーちゃんがおはようございます。といいました」
など、まねをしたり、自分なりの表現を入れたりして、書くことが苦手な子も書くことができた。「先生たくさん書けたやろ」「一回目よりは書けるようになったで」という声が聞かれた。

 そのような表現の面白さを教師がみんなに伝えたことで、書くことへの自信や喜びにもなったようだ。自分が「できるようになった」という実感を持つことが、次の活動の意欲につながってくれればと思う。
(草津市立笠縫東小)