学習を発展させる? 学習は発展する!
森  邦 博

 ある学校の校内研究会でのことである。言葉に表情をのせて文章を音読する演習の場面。
 班別に別れて、@それぞれに音読の仕方を話し合い、A練習をするという活動の手順。

 先ず、話し合いが始まった。
 年上の先生を司会役に話し合いが進むグループ。逆に若い先生に司会役が回るグループ。誰がリードするのでもなくなく口々に言い合っているように見えるグループ。
 子どもたちなら、直ぐに練習段階に進むだろうけれども、話し合いが終わって次に進むのを躊躇する様子が見える。「他のグループは?」と様子眺め。でも「それじゃ練習始めようか」と言い出す人が出てくる。こういう人を行動的リーダーというのだろう。それを潮に他の班も練習に移る。(心情が手に取るように分かる。これは先生独特の世界なのか?日本人一般の特性なのか?)

 つぎは発表だ。
・順番に一文ずつを役割分担して読む班。「一人ずつ工夫してくれましたね」
・全員で読むところ、一人で読むところに分けて音読する班。「全員読みと一人読みに分けてきて強調したいところがよりくっきりしますね」と私。
・第三グループも第二と同じやり方。
 そこで私は、「この班のいいところは」と前置きして、「読んでいるときに顔の表情も変えていてすばらしいと思いました。言葉で伝えるとき、表情があるのとないのとでは伝わる情報量がずいぶん違いますよね」と、深めるつもりで評価の言葉を添えた。
 そして、「今度は、表情を付けてやってみましょうか」と誘った。「え、まだやるの」という表情の先生もいたが、おおむね「やろう、やってみよう」という意志がうかがえた。子どもも「えっ」より「やってみよう」の方が伸びる。

 第二回目の発表。今度はどの班にも表情に工夫する先生の姿があった。「一回目よりすごく気持ちが伝わりますね」と、評価していった。十分にこの演習の目標をクリアできている。先生方の表情も豊かになって気持ちも一層伝わる。実感も伝わってきたからである。
 すると、先ほどの三番目のグループ。今度は身振りも加え、役割にも新しい工夫が加わってより強調する音読に発展している。驚いた。活動に「のって」いる。

 活動に「のって」いるとき、子どももきっとこんな工夫を自ら思いつき、それを互いに取り入れていくのだろう。そして、そんなときに学習は「発展する」。
 「発展させるために」ではなく、「発展はするもの」だ、そういう学習活動作りが大切ではないか。
(大津市教育研究所)