Mさんのいる教室
池 嵜 繁 伸

 私が担任している6年生のMさん(女子)は、中学年の頃から不登校傾向があり、別室登校を続けていた。が、ついに2学期から学級の子どもたちと一緒に教室で学習に取り組み始めたのである。

 私は5年生からMさんを担任している。保健室や青空ルーム(別室登校児の教室)にいるMさんに声をかけるのが、私の日課となっていた。5年生の頃の様子について、次のように記録している。
◆自信がなく、自己肯定感が弱い。
◆運動会やフローティングスクール等の大きな行事に参加することができた。また、別室ではあるが、漢字練習や算数の学習に取り組み、「わかりたい」という気持ちを強くもてるようになってきた。
◆これまで学級でのイベントや学級活動に参加することができているが、現在はクラスの学習にも行けるようになりたいという気持ちを表すようになってきている。
◆学級の子どもたちとの人間関係づくりについては、仲のよい数名の子どもたちを中心にかかわりをもてているが、今後はその輪をより大きく広げていく具体的な手だてが必要だと考える。

 行事への参加・学級の友達とのつながり・学習面等、Mさんの実態に応じた目標と、それに向かうゆるやかな計画について検討し、別室登校児担当教諭・養護教諭・担任・保護者等が連携し、それぞれの立場で働きかけを行ってきた。

 学級担任の立場からの働きかけで、大切なことは次の3つだと考える。
 まず1つは、本人との信頼関係を築くこと。2つめは、学級の子どもたちと別室登校児のよりよい人間関係をつくることである。5年生の後半からは、学級の子どもたちとの人間関係づくりに重点をおいて働きかけを行ってきた。Mさんを含めた学級全員で遊ぶ時間をできる限り設定したり、比較的仲のよい友だちに声をかけたりして、子どもたちどうしの人間関係が少しでもつながるように働きかけてきた。
 3つめは、情報の伝達と行事への参加を促すことである。学習の様子を含め、たえず学級・学年の情報を本人に直接伝える。行事の事前学習等については、その内容をしっかり伝え参加までの見通しを持たせることが大切である。
 行事等への参加を促す上で有効だったのは、「どうする?」と尋ねるのではなく、参加の仕方について具体的な選択肢を示し本人にそれを選択させる方法であった。

 すべての練習に学級の仲間と一緒に参加することができた小学校最後の運動会。組体操の演技を終えて拍手の中を退場していくMさんの表情は、ちょっぴり誇らしげに見えた。
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