本棚  海馬 脳は疲れない
池谷裕二・糸井重里 著 BK1
新潮文庫 2005.7 590円
海馬

 脳と記憶に関する対談。自分の脳もまだまだ大丈夫と思えてきて元気の出る本である。

 例えば、脳細胞は毎日何万個も死んでいくと言われる。だから歳を取ると物覚えが悪くなるのだと思ってしまう。脳細胞が壊れていくことは事実だが、脳には1000億個もの神経細胞があって、使われているのは2%だけ。生き残っている細胞の方がはるかに多いので気にする必要はない。大人はたくさんの知識を頭の中に詰め込んでいるから、一つを選び出すのに時間がかかるだけと言われるとほっとする。

 書名の「海馬」とは、記憶を司る部位である。その海馬の細胞は何歳になっても増えている。その中に記憶が蓄えられるわけではないが、海馬が大きければたくさんの情報を同時に処理でき、残そうという判断ができる。海馬は生存に必要な情報かどうかを判断して、生存に必要なものを記憶する。だから、受験勉強でも、海馬をだまして 、それがいかに生存に大事なことかを自分に納得させると勉強がはかどる。また、好きなことを判断する扁桃体が活性化すると海馬も活性化するので、好きなことは覚えやすい。

 脳はどれだけ使っても疲れない。まだまだ使えます。(常諾真教)